アロマティック

交錯する想い

 永遠としてしまった。
 観覧車で、キス。

 何度も角度を変え、交わしたキスは―――

 そう。
 あのとき吐息が混ざりあったふたりは確かに……溶け合った。

 まるで―――

 恋人同士のように。

 一瞬、現実の様々な事柄が頭から飛んで、永遠以外のことが考えられなくなった。

 永遠くんとわたし。
 男と女。
 恋人同士……?

 給湯室の鏡に映る自分の唇を見つめ、そっと指で触れる。
 永遠の柔らかな唇と重なった唇。
 触れた指先は冷たく、ひんやりとした感覚が伝わってきた。

 ちがう。
 指なんかじゃ比べられないよ。

 あれは

 素敵な時間だった―――。

 ガタッ。

「―――!」

 換気扇が音をたて、それに驚いたみのりがびくりと飛び上がり、我に返る。
 手元を見て、作業の途中だった最後のボトルマグのふたを慌てて閉める。
 自分の唇なんか撫でたりして、なにやってるんだろ。
 そんなこと考えてる場合じゃないのに。

 ダメだ……最近のわたしは、気を抜いたら永遠のことばかりを考えてしまう。
 正確には永遠とのキスなんたけど。
 彼の顔を見上げれば、視線は唇にいってしまう。ふたりきりになると妙に落ち着かなくなって、自分でも意識してるってわかってるけど、どうにもできない。
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