アロマティック
 これじゃまるで、永遠くんに恋して……。

 恋!?

 恋なわけない。
 男と女なんだから、キスなんてしたら意識するの当たり前じゃない?
 意識しないでいるほうが難しい。
 でも。
 最初にされたキスは、なんだかんだすぐに忘れてしまったのに、観覧車でしたキスはいつまでも忘れられないでいる。
 永遠とのはじめてのキスは、トイレで不意を突かれたものだったから、特別な感じもなにも、突然のことで怒って蹴飛ばした、んだよね。
 ……今回のキスは、抵抗するどころか、わたし、受け入れてた。
 もちろん最近のときと比べたら、永遠に抱く印象も感情も違うわけだけど。
 だったら感情はどう変わったんだろう。
 永遠というひとの、仕事に対する取り組みかたは真っ直ぐで妥協がない。できるということに慢心するわけでもなく、ひたすら一途な仕事ぶりは尊敬に値する。そんなひとと一緒にいられることに喜びも感じる。そこには確かな好意も。

 これが恋なのかというと、どうなの?

 深く考えるのが怖い。
 男性との間に距離を置いていた期間が長かったぶん、慎重にいきたい。
 それに。
 永遠の気持ちはどうなの?
 怖いのを紛らわすためのキスだったの?
 本当にキスしても落ちない口紅なのか、試してみたかった?
 それとも……?
 どんな意味が込められたキスだったんだろう。
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