アロマティック
気づくと個室トイレのなかにいて、その鼻先で勢いよくドアが閉まった。
「………ッ」
声をあげようと開けた口が、ぬくもりのある大きな手で塞がれる。慌てふためいたみのりが手の主を探す。目の高さには相手の胸板。頭をあげると、ビンゴ。永遠だ。
口を開くなというように、永遠が唇の前で長い人差し指を立てる。みのりがコクコクと頷くと、口を覆っていた手はそっと離れた。
息苦しさから解放されたみのりは肩で大きく息を吐き、ここに来た目的を思い出した。
永遠の顔色をうかがい、血色のよい肌色を確認。具合が悪そうには見えない。
安心して気が緩んだら、自分がいま置かれているとんでもない状況に、あらためて気づいてしまった。相手の体温が感じられるほどの至近距離に立っているのが、男だということに。
外に音が聞こえないように、ゆっくり靴を滑らせながら狭いトイレのなかを後退し始める。少しでも離れるため、洋式の便器を挟むように永遠の立つ壁と対面になる壁際まで移動。たどり着くと冷たい壁に背中を押し付けた。それでも個室トイレにふたり。どんなに離れようと、相手の息遣いが聞こえるほど近くであるのは間違いない。せめてもの救いは、相手の身長が高く、見上げなければ顔を見ずに済むことだった。
「………ッ」
声をあげようと開けた口が、ぬくもりのある大きな手で塞がれる。慌てふためいたみのりが手の主を探す。目の高さには相手の胸板。頭をあげると、ビンゴ。永遠だ。
口を開くなというように、永遠が唇の前で長い人差し指を立てる。みのりがコクコクと頷くと、口を覆っていた手はそっと離れた。
息苦しさから解放されたみのりは肩で大きく息を吐き、ここに来た目的を思い出した。
永遠の顔色をうかがい、血色のよい肌色を確認。具合が悪そうには見えない。
安心して気が緩んだら、自分がいま置かれているとんでもない状況に、あらためて気づいてしまった。相手の体温が感じられるほどの至近距離に立っているのが、男だということに。
外に音が聞こえないように、ゆっくり靴を滑らせながら狭いトイレのなかを後退し始める。少しでも離れるため、洋式の便器を挟むように永遠の立つ壁と対面になる壁際まで移動。たどり着くと冷たい壁に背中を押し付けた。それでも個室トイレにふたり。どんなに離れようと、相手の息遣いが聞こえるほど近くであるのは間違いない。せめてもの救いは、相手の身長が高く、見上げなければ顔を見ずに済むことだった。