アロマティック
「アイツに触れられたあとで、男に触れられたくないんじゃないかって。本当は抱きしめたいけど、いまお前に触れて拒絶されるのが怖い」

 みのりは首を振った。

「大丈夫。大丈夫なの。永遠くんは……!」

 感情がコントロールを失って押さえきれないくらい苦しい。ただただ、永遠が必要だった。
 勢いに任せてみのりは行動した。
 自分を抱きしめていた腕を解いて、つま先立ち、身を屈めている永遠の首もとに絡める。
 気持ちをぶつけるように、みのりは唇を近づけキスをした。
 唇が重なると、みのりの行動に驚いた永遠がつかの間身をこわばらせる。やがてテーブルに付いていた永遠の手が離れ、みのりの背中を抱きしめキスに応えた。

 息をするのも忘れ、みのりは永遠のキスを求めた。
 みのりから求められたことに、永遠は喜びを感じた。喜びを感じた永遠はより多くのものを求めた。
 みのりの唇を割って舌を滑り込ませる。永遠の首に回されたみのりの腕に力がこもる。舌を絡ませ、空気を求めるように互いを求め、奪い、奪われるようなキスが繰り返され、息を乱す。
 ようやく離れた唇はふっくらと濡れていて、キスをした証を残していた。永遠の逞しい胸に顔をうずめ、守るように抱きしめられながらみのりは思った。


 わたしはもう、永遠から離れることができないかもしれない――。
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