アロマティック

痛みと癒しと熱と

 永遠くん……!

 あのとき、確かに聞こえた。
 みのりの声。

 コンサートのセットリストを決める、最終段階の話し合いを終わらせた俺は、みのりのもとへと駆けた。
 突然現れたにもかかわらず、笑顔で迎えられた撮影現場は昼食中で和やかな雰囲気だった。
 そのなかに、みのりと凌の姿がないことにすぐに気づき、嫌がるみのりに触れている凌を見たとき、カッと体は燃え立ち、怒りで目の前が赤く染まった。

 俺のみのりに、触れるな……!

 いますぐ凌を引き離し、気が済むまで殴ってやる。暴力的な衝動が体を支配する。
 しかし、問題を起こしてはいけないのだ。ドラマに関わってきた多くのひとたちの期待を背負っていることを考えたら、凌を傷つけることはできない。なけなしの理性が働いてギリギリの所で感情を抑えた。

 みのりが無事なことを確認し、安堵したとき。ほかのどんなものも興味を失い、俺のなかにあるのは彼女の存在だけだった。
 今すぐ俺のものにしたい。
 俺のものだという印を体に刻み付けたい。
 しかしみのりは、男に対して精神的に辛い思いをしている。
 テーブルと自分の間にみのりを閉じ込めたとき、全身が彼女を求めたが、触れて拒絶されるのが怖かった。

 そのとき。
 みのりが身を投げたし、キスを求めてきた。すがるように、身を預ける彼女が愛しくて愛しくてたまらなくて、キス以上のものを求めた。
 深まるキスに応える、みのりの柔らかな唇。
 体が喜びに震え、もう絶対離したくない、離すものかと心に誓った。
 あのとき俺は―――。
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