アロマティック
 なぜなら。
 気持ちが永遠くんに傾きつつあるから。
 もう、わたしは永遠の存在を無視できない。

 だからこそ、わたしの問題で仕事を疎かにするようなことはしてほしくなかった。
 わたしはずっと過去から逃げていた。
 永遠のために、強くならなくては。
 ちゃんと向き合わなくては。

 でも、どうやって?
 凌とふたりきりになるのが怖い。
 メールでできるような軽い会話ではない。電話も考えたが、声だけでは相手の心が読めないと思う。やはり顔を合わせて話し合うのが相手の感情の動きもわかりやすいし、気持ちも伝わる。
 永遠の影響か、再会してすぐは耐えられなかった凌との会話も、距離を置けば多少耐えられるようになった。
 けれど。
 触れられてしまうと、生々しい過去のあの瞬間を思い出し、とてつもない嫌悪感に襲われる。
 本当はほうっておいてほしかった。再会なんてしたくなかった。
 でもいま、前に進むための障害があるとするならば、それは凌なのだ。
 逃げたいと逃げてはいられない。立ち止まってもいられない。
 乗り越えなければいけない。
 わたしが前に進むために。

 話し合う方法を考えなければ。
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