アロマティック
 みのりが必死になっている様を、永遠の瞳が興味深げに追う。

「最近ヤってねぇんだよなー」

「欲求不満なんじゃね?」

 外から聞こえてくる下品な言葉から逃れるように、みのりは目を閉じる。ここにいるのがバレているわけではないが、女子が聞いてはいけない、男同士の会話を聞いているのが嫌で、耳も覆った。それでも、緊張からくる心臓が早く胸を叩く音と、会話は耳に入ってくる。

「彼女がヤらせてくれねぇんだ」

「彼女がいるだけいいだろ? ただでヤれるんだからさぁ」

 聞こえてくるいやらしい笑い声。
 こんな生々しい男の会話なんて聞きたくもない。ましてや、こんな狭い個室トイレで親しくもない男と一緒のときに。
 余計、気まずくなる……。

「………!?」

 目を閉じていたみのりが肩を叩かれ、反射的に永遠を見上げた。そこにあったものにつかの間唖然とし、危うく吹き出しそうになる。慌てて耳を塞いでいた手を外し、その手で口元を覆う。
 なにを思ったか、いままで沈黙を守っていた永遠が、両目をおもいっきり上に上げて、舌を突きだしてきたのだ。

 すごい変顔!!

 とんでもない破壊力。
 ハンサムな男が変顔をするととても面白くなるらしい。
 この人なに考えてるの!?
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