アロマティック

「みのりちゃん! だいじょ――」

「「!」」

 玄関で抱き合うふたりを見て、理花があんぐりと口を開けた。

「ご、ごめん」

 理花は目の前の光景に、慌てて謝る。

「心配だったから、来ちゃった。だ、大丈夫みたいでよかった、うん」

「理花、あの――」

 外へとバックする理花を引き留めようと、みのりは手を伸ばす。

「あっ、いいのいいの! これから夕飯食べるとこなんだ。じゃあ頑張って! またねっ! え―……と。そう、焼き肉! お肉にキャベツとニンジン、ピーマンにもやし……あと麺とソースも……」

 一陣の風のように現れ、あっという間に去っていった。
 取り残されたふたりは唖然と立ち尽くし、だんだんと小さくなっていく理花の声を聞いていた。

「焼き肉?」

 みのりは首を傾げた。

「それって焼き肉っていうより、焼きそばじゃね?」

 永遠が突っ込む。
 目を合わせると、ふたりそろって声をあげて笑ってしまった。
 もうそれどころではない。
 ドアを開けていきなり男女が抱き合ってたら、それはやっぱり驚くだろう。混乱させてしまった理花に申し訳なくなった。

「あとで理花に、ちゃんと謝らないと」

「そうだな」

 先程までふたりの間にあった、嵐のような情熱は落ち着き、いまはほのぼのとした安らぎに満たされていた。
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