アロマティック
 事務所でハーブティーを作り、各々のマネージャーに手渡したみのりは、永遠のぶんを持って撮影現場のアロマショップへ向かった。永遠を探してみたが姿が見えない。まだ来ていないようだ。
 撮影現場のなかでも、スタジオでの撮影や外の撮影もあるけれど、やっぱりアロマグッズに囲まれたお店での撮影が一番楽しかった。
 スタッフが慌ただしく行き交うなかで、邪魔にならないよう精油が並んだ棚のそばで、お店のなかをじっくり眺めていた。
 アロマに囲まれた生活、やっぱりいいな。
 もし、わたしがお店を作るなら……アロマメインはもちろんだけど、ハーブティーもいろんな要望に応えられるように揃えたいな。どんなお客さんでも入りやすいお店で、買い付けも海外まで足を運んで、直接精油を抽出するところから見て……。

「おはよう」

 顔をあげると、そっと声をかけてきたのは、凌だ。遠慮がちな微笑みを浮かべている。
 昨日の今日でまだ少し心がざわつくけれど、もともと凌は悪い人じゃないのだ。こんな風に話しかけられて、冷たくすることはできない。

「おはよう」

 みのりも遠慮がちに挨拶を返す。

「顔、大丈夫?」

「頭、大丈夫?」

 同時に話しかけ、お互い一歩引いた姿に苦笑い。
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