アロマティック
「たくさんのファンに愛されてることは、とても感謝してる。ファンや関係者の人たちが、俺らから離れないで支えてくれたから、ここまで来れた」

 永遠の小さく呟くように話す声を聞くのに、みのりは耳を澄まさなければならなかった。

「それでも仕事が続くと正直、キツいって感じるときもある。そんなときそばで支えてくれる癒しのような存在があると、また仕事に向き合う気持ちも変わったんだ」

「………」

 表情を読まれたくないのか、壁に後頭部をあずけて上を見上げる永遠。みのりはかける言葉が見つからなくて、黙ったまま話しを聞いていた。永遠が疲れたように重いため息をつく。

「多分、周りの重圧に負けたんだろうな。俺なりに求められるものには応えてきたつもりだったけど……」

 痛みに耐えるように、永遠は目を閉じた。

「……足りなかったのかな」

「違うよ」

 黙っているつもりだったのに、いつの間にか自分の過去と重ね合わせていた。

「想いの大きさが違っただけ」

 目を閉じ、上を向いていた永遠が、視線を返してきたが、みのりはここではないどこか遠くを見つめていた。

「相手を想う永遠くんの気持ち、わかる。だから終わったときのむなしさも、寂しさも……」
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