アロマティック
 違うことを考えようと店内を見渡したみのりは、精油の瓶の並びが少し曲がっていることに気づいて、回りの瓶を倒さないように綺麗に並べ直していった。その作業に夢中になっていると、やがて気持ちも落ち着いてきた。
 その様子をじっと見ていた永遠が、

「みのりは本当にアロマが好きだよな。見てると愛しそうに扱う様子からよくわかるよ」

「そう、かな?」

 端からみてもそれがわかるくらい、顔に出てるのかな?  それが嬉しくもあり、照れ臭くもあった。

「わたしね、アロマに囲まれたこういう生活に、ちょっと憧れるんだ。いつか、自分のお店がもてたら……なんて」

 ベルガモットの瓶を並べ直しながら、想像力を膨らませて、ふふっと笑う。

「それじゃ俺も、もっとアロマの勉強しないとな」

 永遠が世間話でもするようにサラッというので、その言葉が意味するところまで考えるのに時間がかかった。

「え?」

 聞き返したときには、監督に呼ばれた永遠がみのりに背中を向けるところだった。
 あとでな、軽く手をあげた永遠はいってしまった。
 どういうつもりでいったの?
 そのことが聞けないままに。
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