アロマティック

　皆で作ってきたアロマティックもクランクアップを迎え、いよいよ打ち上げ当日。
　美味しいピッツァを出すと有名なイタリアンのお店の、ディナータイムを貸し切って行われる。白を基調とした店内には赤に金色のラインが入ったジュータンが敷かれ、それがゴージャス感を演出している。高い天井には美しいシャンデリアが煌めいていた。長方形のテーブルをいくつもつなげ、その上には前菜、生ハムやリゾットにパスタ、ポーク料理のサルティンボッカ、焼きたてのピッツァがところ狭しと並ぶ。参加人数が多いため、自由に動き回れるように立食形式だが、着席もできるようにお店の隅には椅子が並んでいた。
　食欲を誘う美味しそうな香りに包まれ、スパークリングワインを片手に、監督の挨拶で打ち上げは始まった。

「カンパーイ！」

　グラスが合わさる高い音がそこいらじゅうで響き渡る。待ってましたとばかりに周りがざわめき出した。あちこちから話し声やお皿のたてる音が賑やかに聞こえてくる。お喋りに興じるひと、料理を食べるひと、様々だ。
　みのりはとなりの永遠と、周りのひととカンパイをしてからはひとりでスパークリングを飲んでいた。永遠は早速、監督の方へ足を運び何やら楽しそうに話している。
　冷たくて美味しいスパークリングワインを味わっていると、さっきまで遠くにいて姿が見えなかった凌が近づいてきた。