アロマティック
 みのりはいま、誰を見てる? 永遠が心で問いかける。

「それほど好きになった奴、いたんだ?」

 永遠の問いかけに視線を合わせると、その真っ直ぐな瞳に、心の奥まで見透かされているような気分になった。居心地が悪くなったみのりは、さっさと会話を終わらせて永遠の視線から逃げたくなった。

「あの人のそばにいられるならどんなことも耐えられた」

 実際、色んなことがあってその度に乗り越えた。
 あのときまでは……。

「生涯共に過ごせると思ってた。お互い同じくらい求めて、同じくらい必要だと……結局、永遠くんと同じ結果になってしまったわけだけど」

 あきらめ口調のみのりは伝えたいことをいってしまうと、個室トイレを出るために永遠に背を向ける。

「そんな気持ちにさせるほどいい男だったんだ?」

 背中にかかる永遠からの問いかけ。少なくとも彼の顔を見ずに答えられるからそのぶん、答えるのも楽だった。

「わたしの見る世界で一番だった」

「俺より?」

「は?」
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