アロマティック
　各々が顔をあげて、みのりを笑顔で迎える。僅かに片手をあげて待つひとりひとりと、挨拶のハイタッチを交わす。
　ボトルマグの入ったトートバッグを机に降ろし、重いものから解放されて軽くなった肩を軽く揉みながら、皆の様子をうかがう。
　空は次に作る和菓子の新作を考えているのか、ときおり頭を上げながらなにやらメモを取っている。天音はいつものようにスマホでオンラインのオセロかな？　聖はひとり鏡の前に張り付き、朝陽は静かに文庫本を読んでいた。永遠は原稿用紙に、夢中になってなにかを書いている。

「それは？」

　みのりか問い掛けると、器用にペンをくるくると回しなから永遠が顔をあげた。

「ファッション誌のコラム。ドラマの撮影中は休載してたんだけど、また頼まれて書いてる」

　なるほど。モデル業もこなす永遠のことだから、ファッション誌にコラム連載しているのも不思議ではない。わたしもまだ知らない永遠がいるんだなぁと思うと新鮮だ。

「テーマとかあるの？」

「好きに書いていいっていわれてる。でも自分でテーマ決めて書いてる。まとまりがないもの書くより、そのほうが読み手にも伝わりやすいだろ」

　さすが永遠。ちゃんと読者の立場も考えてコラムを書いてるんだね。
　のぞき込んでみると、ワイシャツとネクタイの相性ついての話しを書いているようだった。

「やった！」
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