アロマティック
「……好きにしろ」
冷たい言葉がナイフのように胸に突き刺さる。永遠が行ってしまう。待ってと声をかけたくても、見えない壁に阻まれて声をかけることができなかった。追いかけて止めようとしたのに、まるで足がくっついてしまったように身動きが取れなかった。最後に見たのは、燃えさかる怒りを胸に秘め、冷たい表情を浮かべた彼だった。楽屋の外へ通じるドアへ向かうときも、二度とみのりを振り返ることはなかった。
他の皆もそうだ。誰も声をかけることなく楽屋を出ていく。皆が怒るのは当たり前だ。
わかっていながらも、冷たく突き放され、足がすくんで立っているのがやっとの状況だった。
「あ、俺もうちょっと前髪やってから行くわ」
聖の声が聞こえて、楽屋に戻ってきた。みのりはどんな表情で見られるのか怖くて目を閉じ、自分を守るように抱きしめた。
「永遠ちゃんさ、たまにはもっと感情的になってもいいのにね」
靴音から、鏡の前に移動しているのがわかる。
「普段、抑えてるから怒ったときはめっちゃ怖いんだよね」
「………」
みのりは黙って、まるで世間話をするような聖の話すままにした。
「でも、永遠ちゃんが喜怒哀楽を出せる相手って、じつはあんまりいないんだよ。そう考えると、みのりちゃんは特別なひとなんだ。特別なひとに相談もなしにいきなり大事な話されたら、どう思うかな? 」
ヘアブラシを置く高い音がして、足音が近づいてくる。気配を感じて目を開けると、聖が目の前に立っていた。
「今回はみのりちゃんが悪い」
冷たい言葉がナイフのように胸に突き刺さる。永遠が行ってしまう。待ってと声をかけたくても、見えない壁に阻まれて声をかけることができなかった。追いかけて止めようとしたのに、まるで足がくっついてしまったように身動きが取れなかった。最後に見たのは、燃えさかる怒りを胸に秘め、冷たい表情を浮かべた彼だった。楽屋の外へ通じるドアへ向かうときも、二度とみのりを振り返ることはなかった。
他の皆もそうだ。誰も声をかけることなく楽屋を出ていく。皆が怒るのは当たり前だ。
わかっていながらも、冷たく突き放され、足がすくんで立っているのがやっとの状況だった。
「あ、俺もうちょっと前髪やってから行くわ」
聖の声が聞こえて、楽屋に戻ってきた。みのりはどんな表情で見られるのか怖くて目を閉じ、自分を守るように抱きしめた。
「永遠ちゃんさ、たまにはもっと感情的になってもいいのにね」
靴音から、鏡の前に移動しているのがわかる。
「普段、抑えてるから怒ったときはめっちゃ怖いんだよね」
「………」
みのりは黙って、まるで世間話をするような聖の話すままにした。
「でも、永遠ちゃんが喜怒哀楽を出せる相手って、じつはあんまりいないんだよ。そう考えると、みのりちゃんは特別なひとなんだ。特別なひとに相談もなしにいきなり大事な話されたら、どう思うかな? 」
ヘアブラシを置く高い音がして、足音が近づいてくる。気配を感じて目を開けると、聖が目の前に立っていた。
「今回はみのりちゃんが悪い」