アロマティック
 突拍子もない質問に意表を突かれた。どんな冗談なのかと顔色を窺ってみると、そこには真面目な表情。
 いまのはなに? わたしの聞き間違い?

 永遠の短い質問に、みのりは唖然とした表情を浮かべている。また、発言した当の本人、永遠も己のなかに巻き起こる感情に驚いていた。

 俺はなにを考えてるんだ!? いったい誰に妬いてる?
 みのりとは今日が初対面だぞ。どうしてこんなに気になる?

「あの、なにいってるのかよくわからないんだけど……」

 永遠の発言に混乱した頭を整理しようと、みのりは必死になった。

「俺のほうがいい男だっていってみろよ」

 ここまで来たら引き下がれない。永遠はもう一度みのりに迫った。彼女に近づき、ふたりの距離を狭める。

「永遠くん?」

 戸惑ったみのりは、壁に溶け込んでしまうんじゃないかというくらい背中を押し付けた。
 永遠は更に距離を詰める。
 俺のほうがいい男だっていってみろよ。この質問がそれほど重要だと思っていない。永遠は自分に言い聞かせた。いないはずなのに、答えを待って握りしめた拳に力が入った。

「永遠くんのこと知らないのに、比べられるわけがーーっ!!」

 そんな答えを待ってたんじゃない。
 否定されるくらいなら、その唇を塞いでやる。
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