アロマティック
 はっきりといわれてしまった。
 もっと慎重に動くべきだったのかもしれない。手続きやそれに伴う準備をする間、ハーブティーを作りに来ることはできた。状況を見て話せばよかったのかも。でもそれだと余計、別れが辛くなるような気がした。

「いいわけにしか聞こえないかもしれないけど、わたしだって何回も悩んだの。だけど……話したら止められると思った。止められたら行くのを迷ってしまうって」

「行く? 迷う? まさか、まだ爆弾あるの?」

 含みのある言葉に、聖の表情が焦りにひきつり、みのりはコクリと頷いた。

「Earthがコンサートの頃、わたしはここにはいないから」

「ここ? え? どういうこと?」

 みのりがなにをいおうとしているのかわからず、聖は首を傾げた。

「イギリスにアロマ留学してるはず」

「イギリスー!? ってどこ? それってアメリカより遠いのー!?」

 馴染みのない国の名前にうろたえている。

「わたしね、このままここにいても、肩身の狭い思いをして居づらくなると思う」

「どういうこと?」

「Earthは、誰もが知ってる日本のトップアイドルでしょ。それに比べてわたしにはなにもない。一緒にいて、揺らぐことことのない自信が欲しい。アロマの本場で、もう1度基礎からアロマの力を身につけたい」
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