アロマティック
 そうか。
 みのりは劣等感を感じていたのか。
 基本、ハーブティーだけを作る毎日。
 みのりが出来る仕事は限られている。そんな生活を送ることに、どこか引け目を感じていたのだ。
 聖は、みのりのいっていることがわかる気がした。
 彼女はもっと、深いところで必要とされたがっている。

 本当は、永遠のアロマアドバイザーをしているだけでよかったんだ。それなのに。彼女はEarthのメンバーのことを気にかけて、どんなことも嫌な顔ひとつしないで進んでやってくれた。
 風邪気味だといえば、うがい薬を。不眠に困れば、心地好く寝られるようにアロマスプレーを。会議が何時間も続けば、気分転換にと、アロマディフューザーを焚いてくれた。そして、各々に合わせ毎日作ってくれるハーブティー。
 気づけば皆が、みのりに依存していたんじゃないか?
 でも、それを仕事としてやるとしたら、それだけではやりがいがないかもしれない。自分が同じ立場だったら、物足りなく感じるはずだ。
 もっと必要とされたい、そう思うだろう。
 しかし、いまさら、みのりがいなくなったら?
 そもそも海外へアロマ留学? そんなことをしなくても勉強は出来るんじゃないのか?
 ここは俺が全力で止めよう。聖は皆の気持ちを背負っているつもりで奮い立った。

「えーと。キリギリス……じゃない。イギリス? だっけ? なにも海外まで行かなくたって、日本でだって本格的に学べるところはあるんじゃないの?」
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