アロマティック
 事務所のロゴマークが出て、ステージがセッティングされた明るいドーム内を映し出す。まず、ドーム内を埋め尽くすファンの数に驚いた。
 こんなにたくさんのひとが、Earthに会えるのをいまかいまかと待っている。
 暗転した会場に、ペンライトが光り、歓声があがる。爆発しそうな期待感にドームが包まれた。
 ステージ上の大きなメイン画面に、5人が現れる映像が映し出されると、それだけで声援のボリュームがあがる。
 ステージ上を覆うスモーク。バックから眩しいくらいのライトに照らされ、ゆっくりとステージ下から上がってくる5人の影。音楽と共にメインステージに現れた5人は、正面からのライトを浴び、大きいステージでも霞むことのない衣装を纏っていた。自信をみなぎらせた彼らはクールに微笑み、ファンを迎える。割れんばかりの歓声が、止まらない。眩しいくらいの光りと、迫力のある音量にみのりは圧倒された。
 明るい歌はとことん楽しく、切ない恋心を歌ったものは、憂いを滲ませてしっとりと。歌にそって表情を変え、ときにはメンバー同士じゃれあって、息の合ったダンスと歌で見ているものを魅了していく。
 これが、Earthのコンサート。
 見ているだけで、心が浮き立つ。ここ数日沈みがちだった、みのりの表情にも自然と笑顔が浮かんでくる。
 Earthには見ているものに元気を与える、生命力に溢れたパワーがあった。
 このひとたちの側に、わたしはいたんだ。
 みのりの視線は次第に永遠ばかりを追うようになり、永遠に釘付けになっていった。
< 308 / 318 >

この作品をシェア

pagetop