アロマティック
 最後、あんな別れ方をしたのに、泣いてるみのりに気づいた永遠は変わったところはないかと、心配そうにみのりの頭から足元まで視線を走らせている。
 みのりは首を振って、永遠の胸にしがみついた。永遠は、走ってきたのか、心臓はドキドキと早鐘を打ち、呼吸は荒く体が熱かった。

「ごめんなさい……!」

「……もういいんだ」

 みのりに変わった様子がなく、ホッとした永遠は彼女の腰に腕を回した。

「俺も、会いに来る勇気がなかったんだから」

 違う。永遠はいつだってわたしに優しかった。いつもそばにいてくれた。いつだって守ってくれた。
 それなのにわたしは自分のことばっかり考えて、結果、永遠を傷つけてしまった。一番傷つけたくないひとを、自分のエゴで怒らせてしまった。

「気付くのが遅くなって、ごめんなさい。わたし、永遠が大切な人だってやっと気づいた」

 永遠の手が愛しげに頬を撫で、手のひらで頬を挟んで優しく上向かされる。みのりを見つめる目差しは穏やかで愛情に溢れていた。

「わたし、永遠が好き……!」

「お前がそういってくれるのを、ずっと待ってた」

 永遠の頭が下りてきて、唇が重なる。チュッと音をさせて、交わすキスの数が次第に増えていく。キスの合間に呼吸をしながら、角度を変えて何度も繰り返されるキスに、ふたりは没頭していった。次第に体の芯が熱くなっていく。
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