アロマティック
「首に手を回して」

 欲望に掠れた声に従い、屈んだ永遠の首の後ろに腕を回す。その間も唇は離れることなく、キスは続いた。永遠の片手が背中に回り、もう片方の手で両膝の裏を支え、みのりを抱きあげる。
 みのりがぎゅっと甘えるようにしがみついてきた。
 永遠の胸に愛しさが込みあげる。
 玄関を離れる前に、永遠は僅かに目を開け、内鍵を締めた。
 これでもう邪魔は入らない。
 靴を脱ぎ、寝室へとみのりを運ぶ。その間もキスは続き、彼女をベッドに寝かせたとき、ようやく唇を離した。
 横たわるみのりを跨ぎ、顔を挟むようにベッドに両手をつく。僅かに息を乱した永遠が欲望に瞳を潤ませ、情熱的に見下ろす。

「今夜はもう、離せそうにない」

 みのりもとろんとした瞳で見上げる。

「離さないで」

 うっと永遠が苦し気に呻いた。

「そんな顔されたら、我慢できなくなるだろ」

「我慢しないで」

 永遠に自分を差し出すように両手を広げ、みのりは微笑んだ。
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