アロマティック
 みのりがうとうとしていると、どこかで何かを叩くような音が聞こえてきた。
 目を開けると、暗闇のなかでスマホがライトを点滅させバイブレーションしている。
 手を伸ばして、ベッド横で充電器に差したままのスマホを手に取った。
 どうやら煩かったのは、スマホらしい。

「もしもし……」

 話す声が掠れた。頭もまだ夢うつつのまま完全に覚めていない。
 となりで裸のまま寝ている永遠も、目を覚ましたのか、腰に腕が絡みついてきた。

「もしも~し! みのりちゃん、理花だよ。起きてた?」

「ん、ちょっと寝てた」

「いまから遊びに行っていい?」

 みのりの頭が理花の言葉を繰り返し、

「……い、いまから?」

 ハッキリと目が覚め、驚いて問いかけに問いかけた。

「うん。じつは~もうね、玄関の前にいるのっ」

「はあっ!?」

 慌てて飛び起き、ベッドが振動できしんだ。

「どうした……?」

 みのりの慌てっぷりに、まどろんでいた永遠も覚醒してくる。

「鍵が閉まってて入れないから、開けてほしいなっ」

「ええっ!? ちょ、ちょっと待って」

 陽気な声で可愛くいわれたって、わたし、いま裸……!
 全身を見下ろしたみのりは飛び起きて、横になったままの永遠を振り向く。

「永遠っ理花が来る」

「え?」

「というか、玄関先にいるみたい」

「マジか!」

 永遠も飛び起きて肌掛けが下がり、引き締まった裸体が露になる。見とれないように目をそらし、慌てて服を探す。永遠の服と重なるように置いてある服の塊を見つけ、自分のと分けると永遠に向かって投げた。空中キャッチした永遠とみのりは急いで服を着る。
 電気を点け、お互いの着衣の乱れを整え、問題ないことを確認して玄関へ向かった。
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