アロマティック
「こんばんわぁ」

 鍵を開けると、待ってましたとばかりに理花が入ってくる。

「お邪魔しま~す」

「ここがみのりちゃんの家か」

「女の子の家だ~」

「入るぞ。酒、買ってきたからな」

 と、次々と現れる見慣れた顔。Earthのメンバーが靴を脱いで、唖然とするみのりの目の前を通りすぎ、部屋へと入っていく。

「あれ!? なん……で皆が? 理花だけじゃないの!?」

「私、ひとりだなんていってないよ?」

 ふふっと天の邪鬼な笑みが返ってきた。
 1Kの部屋に7人……一気に人口密度があがる。

「お、お前ら~みのりと最後の夜を邪魔するなよ!」

 奥で、永遠の叫びが聞こえる。

「とりあえず最後ってだけで、明日が本当の終わりじゃないんだからいいじゃん!」

 聖が悪びれることなく笑っている声が聞こえてきた。

 まぁ、いっか。
 楽しいのも悪くない。
 ひとりで寂しかったはずの最後の夜を、情熱的に変えてくれた永遠と、向こうに行っても寂しくないように、楽しい思い出を作る機会をくれた、理花に感謝。
 まぁ理花のことだから、半分はわたしのために。半分はイタズラ心で皆を連れてきたのだろうけど。

 晩酌は空が明るくなるまで続き、二日酔いで具合の悪そうな皆に、空港まで見送ってもらうと別れが辛くなるからといって、家に帰ってもらった。
 残った永遠が、

「やっと帰った。やっと静かになった……」

 泥酔の5人に解放されて、眠そうに伸びをした。

「永遠は二日酔い、大丈夫なの?」

 出発の準備を始めたみのりが、ベッドに座る永遠をキッチンからのぞき込んだ。

「大丈夫」

 寝不足でも、ハンサムな顔がにこっと微笑む。

「みのり、おいで」

 永遠が手を広げて待っている。
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