アロマティック
 みのりは引き寄せられるように永遠に近づき、ベッドに座る彼の足の間に入った。首に腕を回して抱きしめる。永遠の腕もみのりの背中に回る。
 ぴたりと体をくっつけ合い、沈黙のなかでお互いのぬくもりを感じながら安らいだ。

「あー……やっぱり離れたくない。俺を見捨てていくなよ」

 抱きしめる腕に力を込め、本音をもらす。

「わたしも離れたくない。同じ気持ちだよ」

 永遠の腕のなかにいる幸せを、いまはただ感じていたかった。
 永遠がいつも側にいてくれたから、わたしはわたしのやりたいようにできた。永遠が見守ってくれたから、わたしは過去を乗り越えることができた。
 わたしはもう、ひとりで強がらなくていいのだ。
 わたしには永遠がいる。
 それは遠く離れても変わらない。
 永遠がいるから、一歩前に踏み出すことができる。
 硬い胸に手をついて体を少し離すと顔をあげた。永遠が見下ろし、ふたりは見つめ合う。

「永遠、愛してるわ」

 心を込めて、気持ちを捧げる。

「俺も、愛してる」

 穏やかな静寂のなかで、ふたりは再び抱きしめあう。
 永遠はみのりの瞳のなかに迷いなき覚悟をみた。
 どうせ半年の辛抱だろ?
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