アロマティック
「俺はここで待ってる」
「必ず1回で合格決めて、早く帰ってくるね」
みのりはいったことを守るだろう。
それでも身を引き裂かれるような思いがするのは、彼女のことが愛しくて愛しくて愛しくて仕方ないせいだ。
いっそのこと一緒に行ってしまおうか?
……いや、だめだ。コンサートがある。
やはり、大人しく待っているしかないのだ。
「あの、永遠? 眠いわりにはその、元気、みたいだね」
みのりが自分と永遠との間に現れた硬いものに気づいて、恥ずかしそうに苦笑い。
「お前を抱きしめると、こうなっちゃうんだ」
永遠はみのりに反応する自分の分身の命令に忠実に従い、みのりの顎を捕らえ、上向かせる。
「わたし、そろそろお化粧――んっ」
逃がすものか。
口を開けたみのりの唇をキスでふさいだ。
「と、永遠……」
キスをしながら服を脱がせていく。
「ね、ねぇ、着替えたばっかり……!」
身をよじるみのりをがっちり掴み、体を反転させてベッドに押し倒した。
「服なんて、脱いだらまた着ればいい」
至近距離にあるのは、欲望に潤んだ瞳。掠れた低音ボイスに心の内側を撫でられ、みのりは抵抗できなくなった。
窓から入る朝日の、柔らかな光りに包まれて、ふたりは体を重ねた――。
数時間後。
羽田国際空港では、搭乗時刻ギリギリに慌ただしく飛行機に乗るみのりの姿があった。
その顔に浮かぶのは、満たされた笑顔。
心配も不安もなにひとつない瞳は、希望に輝き未来を見ていた。