アロマティック

突きつけられた契約書

「契約書」

 追いたてられるように車に乗り込んですぐ、目の前に突きつけられた一枚の紙。

 ん!?
 契約書?

 永遠の発言に、みのりはその紙を奪い取る。そこに書かれている文章を目で追った。

『○月○日

本事務所は、本日よりアロマアドバイザーとして、藤本みのりをEarth、永遠の顧問に命ずる』

「なにこれ!?」

 叫んだみのりの声がひっくり返る。契約書と書かれた用紙に唾を飛ばす勢いで驚いている。

「職、見つかってよかったな」

 後部座席のとなりに座る永遠。腕を組みながら、広々とした車内のなかで、ゆったりと長い足を組んで超嬉しそうに笑っている。

 だいたい、なんでわたしが求職中だったの知ってる……待って。
 そもそもなんで、わたしの家を知ってるの?

「………」

 まさか、理花?
 あっけらかんと笑う彼女が頭に浮かび、みのりの口から重いため息がひとつこぼれる。

 わたしが求職中なの知ってるのも、家を知ってるのも理花。昨夜、Earthのメンバーと仲良しこよししてたのも理花だ。
 どういう経緯でこうなったの? どうやら後で、じっくり話し合う必要がありそうだ。
 今は、自分が直面している現実に向き合わなければ。
 みのりは深呼吸をして心を落ち着かせ、永遠の整った横顔に問いかけた。
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