アロマティック
「これで契約完了だな。さっそく明日からよろしく」

「よろしく」

 満足したのか、必要な話しが済んでしまうと口を閉ざした永遠は目を閉じ、再び自分の世界へ戻っていった。
 みのりは暗い車内から、窓の外を流れ行くネオンをぼんやりと見る。

 毎日朝早くから遅い時間まで、休む時間もなく忙しい永遠。これがいつまで続くのか、考えて怖くならないのだろうか?
 疲れたとは口に出さず、精力的に動き回って時には周りのフォローもして。最初から最後まで完璧にこなしていた。体力的にも精神的にもキツいと感じないのだろうか?
 わたしなら無理だ。
 こんな毎日が続くなんて、考えただけでゾッとする。
 ほんとうに好きじゃなければできない。
 周りに疲れも見せず、笑顔でやりきる姿は……意外だった。
 永遠は最初、変質者の姿で現れたからね。いま考えるとほんとうにすごい出会い方。お調子者で、こっちは振り回されっぱなし。と思ったらちゃんと意見も聞いてくれる、真面目なところもあって。色んな顔を持ってるから、きっと周りの人たちはいつも新鮮な気持ちで永遠と接しているんだろう。
 例えていうならビックリ箱? 次、何が起きるんだろう? と、飽きさせない。

「……?」

 肩に重みを感じて我に返る。
 顔をあげたみのりの頬を、サラサラの髪がくすぐる。
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