アロマティック
 気づいたら永遠が、みのりの肩に頭を預けて目を閉じていた。耳を済ますと規則正しい呼吸。

 マジ寝だ……!
 どうしよう。
 重い。

 すっかり力の抜けた体、いくら細身とはいえ、小さいみのりには大きい永遠を支えるのはちょっと辛かった。頑張る仕事っぷりを見ていた分、起こすのは気が引けるけど……。
 永遠を起こそうとしたみのりは動きを止める。
 時おり車内を照らすネオンライト。そこに浮かび上がる永遠の寝顔。
 キレイだなぁ。整った男の寝顔はキレイだ。
 感心したみのりが重みも忘れて見とれていると、永遠のまぶたが震えながら開いた。

「寝づらい」

 寝ていたことを裏付ける掠れた声が、不機嫌そうに文句をいう。

「みのり、もっとそっちいって」

「え?」

 ドアを指さす永遠に、戸惑う。いわれるままに移動し、体の側面がドアにくっつくまで寄った。それを見届けた永遠は「よし」と満足そうに呟くと、長い体を折り曲げて座席の上にごろんと横になる。

「だいたい肩の位置が低くて寝づらいっての……」

 ブツブツ文句は次第に寝息に変わる。

「………」

 手持ち無沙汰の両手が宙に浮いたまま、置き所に困ってしまった。
 太ももの上に永遠の頭。
 頭が乗っている。
 これはいわゆる、膝枕というやつでは?
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