アロマティック
 ぼんやり目を開けたみのりは、カーテンから漏れる明るい光に目を開けた。

 今何時?
 頭をもたげて時計を見る。
 7時……。
 えっ7時!?

 目覚まし設定するの忘れたまま、寝ちゃったんだ!
 慌ててがばっと勢いよく起き上がる。急かすように再びインターホンが鳴った。玄関に向かってフローリングの上を走り抜け、鍵を外して勢いよくドアを開ける。

「お、おはよ!」

 目の前に立つ長身の人物の顔を見上げる。思った通り、そこには永遠が立っていた。髪型もバッチリ決めて、服装も自分の細身の体に似合うものを着こなしている。

「………」

 口を開きかけた永遠の視線が細くなる。永遠の目が、みのりのボサボサの髪から寝間着替わりのルームウェアをとおり、裸足の足に下りていく。そして腕時計を見て一言。

「……15分」

「りょ、了解!」

 身をひるがえし、車へ戻る永遠の背中に声をかけて大きく深呼吸。気合いを入れて猛スピードで支度を始めた。
 昨日に引き続き、ドタバタと仕事に行く用意を済ませ、トランクを手に家を出る。

「お待たせしました! ごめんなさいっ」

 後部座席のドアが開いていたので、永遠の隣りに乗り込む。

「なにそれ?」

 永遠の視線がトランクに止まる。

「仕事道具」

 みのりは笑って、愛しげにトランクを叩いた。
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