アロマティック
 車での移動の間は、アロマに関する知識を分かりやすく説明して、楽屋など固定の場所に留まっている時間は、永遠の休憩の時間を利用して、実技を教えていくことになりそうだ。
 本人にやる気があれば、それほど難しいことはない。

「アロマの知識はどれくらい? 全く?」

 走り出した車に揺られながら、昨日と同じように、一緒に後部座席に座る永遠に問いかける。

「とりあえず本でも読んどくかって本を探しに行ったのが、2日前」

 変質者みたいな格好で、わたしと本の取り合いをしたときね。思い出してみのりは苦笑する。

「チョイスはよかったけど、初心者には難しい本選んだわね」

「その言い方引っ掛かるなー」

 車の走る前方を向き、長い足を組んでリラックスしていた永遠が、こちらに身を乗り出してきた。整ったハンサムな顔が近づく。

「アロマに関してはわたしが先生。永遠くんは生徒なんだから文句はいわないの」

 いつも振り回されてるのはこっちのほうなんだから、自分の唯一の強み、アロマに関しては譲らないわよ!
 先生と生徒。
 なんていい響き。うん、それでいこう。

「それでは永遠くんに質問。アロマテラピーといわれて浮かぶイメージは?」

「アロマテラピー……」

 腕を組んで、うーんと唸る。
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