アロマティック
 そんな音にも慣れた様子で皆が動じないなか、みのりだけが驚いて飛び上がる。
 開いたドアの向こうからギリシア彫刻のように彫りの深い顔を険しく歪ませ、肩から歩くようにして朝陽が入ってきた。見るからに殺気だった様子。
 キリッとした眉のライン、ダークブラウンの印象的な瞳。鼻筋の通った魅力的な面構え。すれ違った誰もが振り返るオーラみたいなものがある。
 いい男が怒ると迫力があるものだが、彼からは物凄い気迫が伝わってくる。

「朝陽、おはよ」

 朝陽の様子に慣れているのか、他のメンバーは動じない。メンバーひとりひとりとハイタッチした朝陽の視線が、最後にみのりに止まる。
 鋭い眼光。
 澄んだ瞳に睨まれると凄みを感じるものなんだね。

「………」

 わたし、なんかした?
 なんか怖い。
 心の裏側まで見透かされてるような気分になる。みのりの心はざわついて落ち着きをなくした。
 どうしたらいいのか困っていると、しばらく睨まれた後、朝陽に背を向けられてしまった。
 何事もはじめが肝心。相手がなにを考えているのかわからないやつでも、今後何度も顔を会わせるかもしれないのだ。
 他の皆と同じように、挨拶だけはしておこうと、タイミングは外したが、みのりは勇気を出した。

「おはよう。今日から永遠くんのアロマアドバイザーになったの。よろしくね」
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