アロマティック
「いつもより眠れると思う。それ、永遠くんが作ったんだよ。騙されたと思って使ってみて」

「あ、これ、永遠が作ったんだ」

 永遠という名前に反応して、硬くなっていた空の表情がたちまち柔らかくなる。
 返事の代わりに振り返った永遠が、こぶしを空に向かって突きだし、親指を立てて自慢げに頷く。すると、リーダーも、わかったというように同じ動作を繰り返して強く頷いた。

「なになに、俺のはないの?」

 聖が自分を指さしながら、こちらへ向かってくる。それを数歩進んだところで、天音が聖のシャツを掴む。

「ありません。聖ちゃんが入っていくとややこしくなるからダメですって」

 聖の行動を読んでいたのか、天音の動きは素早かった。掴まれた聖のシャツが、びろーんと伸びる。

「あー!」

 苛ついた声をあげながら、朝陽が戻ってきた。すぐにスタジオ内の変化に気づいて足を止める。

「なんだ?」

 彫りの深い整った顔をあげて、空気の匂いをかいでいる。

「あー俺。みのりとアロマ弄ってた」

 永遠が軽く手をあげる。

「気になるなら換気するか?」

「いや、いい。続きやろうぜ」

 朝陽の一声で休憩も終わりのようだ。
 朝陽が自分の荷物のところへスマホを置いて立ち位置に戻ると、それが合図のようにそれぞれがポジションに戻っていく。

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