アロマティック
 スタジオを出て、通路の突き当たりに自販機を見つけたみのりは、ミネラルウォーターを買った。
 冷たく冷えたミネラルウォーターのボトルは、暖かい空気に触れ、小さな水滴に包まれて白くくもる。それを見たみのりは、汗をかいた永遠を思い出した。
 永遠にも買ってあげようかな。
 でも、なにを飲むんだろう?
 お茶? コーヒー? それともスポーツドリンク?
 どれを買うか迷い、結局無難なミネラルウォーターに決めた。
 小銭を出してもう一本購入。両手にミネラルウォーターを1本づつ。
 そこでEarthの他のメンバーの顔が頭をよぎる。
 うーん、永遠だけだと不公平だ。
 あと……4本買わなきゃ。
 持てるかな?
 ミネラルウォーター2本は腕に抱え、お財布から小銭を探していると、顔の横に突然、見知らぬ腕が伸びてきた。
 驚いて振り返ると、そこに天音が立っている。

「天音くんか、びっくりした」

 片手を自販機についた天音と自販機の間に、みのりは挟まれるような形になった。見上げた天音の顔には、天使のような微笑みが浮かんでいる。
 なんでこんな体勢?
 気になったものの、相手は一般人ではない。
 この人たちは普通と感覚が違うのかもしれない。
 昨日今日と見ていると、メンバー同士、親密なボディタッチをしているのをよく見かけるし、永遠も異性とか気にすることなく、わたしに接していた。
 だから、この距離もEarthのメンバーからしたら普通なのかも。
 最初に感じた疑問を押しやる。
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