アロマティック
 天音の不可解な言動が、どうしても引っ掛かる。
 どんな含みがあるにせよ、相手が悪かったわね。わたしに色仕掛けは通用しない。

「あのね、天音くん。それ、無理だから」

 相手のプライドが傷つかないよう、なるべくやんわり、それでいて望みはないとはっきり伝える。

「みのりちゃんを満足させてあげたいなぁ」

 天音は堪えてないのか、攻める姿勢を崩さない。
 性的なことを考えるだけでも嫌なのに、自販機との間に挟まれっぱなし。そろそろ相手を思いやる余裕がなくなってきた。

「それなら離れてもらえる?」

「こうされて嬉しくないの?」

「嬉しくない」

「じゃあさ、なにが望み?」

 天音の表情から柔らかさが消えた。みのりの出方を探りながらも苛立ちがうかがえる。

「ないから答えようがない」

「本当は永遠を狙ってるんじゃないの?」

 無心のみのりに対し、天音はまだ疑っている。

「永遠くんとは仕事してるだけ。永遠くんを男として見ているわけじゃないの。わたしが楽しんで見えるのは、やりがいがあると感じているから。男を好きになることはないから心配しないで」

「えっ男はって、みのりちゃん」

「や。ちょっと待って! 女が好きって意味でもないから」

 その慌てっぷりから変な勘違いをしそうな天音に、みのりは先回りして訂正する。

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