アロマティック
「天音くんて、なんていうか……」

「仲間意識が強い?」

 会話を止めて言葉を選ぶみのりに、永遠が答えた。まさにその通りだと、みのりが頷く。

 あんな風に自分を犠牲にしてまで守ってくれるひとが側にいるって、どんな感じなんだろう?
 自分の身は自分で守るしかなかったみのりには、わからない感覚だった。
 Earthは皆、個性的だ。自然体でいながら、お互いの個性を殺すことなく、引き立たせている。
 上下関係などなくラフでいるのに、お互いの行動や言動を認め、受け入れている。
 だからこそ、いろんな世代の支持を得てきた。
 うらやましい関係だと考えるのは、みのりだけではない。

「天音、みのりのこと気に入ったんじゃないか?」

「そうかな? 殺されそうになったんだけどね」

「マジか!?」

 過激なことをさらっというみのりに、永遠の頭が膝の上から浮く。

「いいから寝てなよ」

 あのときの状況を説明してなんになる?
 みのりは永遠の頭を自分の足に押しつけ、その流れで触れた髪を撫でてみた。
 思ったより柔らかく、ボリュームがある。

「永遠くんの髪、さらさら」

 温かくて触り心地のいい動物を触っているような気分。指の間を滑る髪が気持ちいい。

「あー……やべぇ。気持ちいいわ。眠くなる……」

「長時間練習で疲れてるでしょ。膝枕オプションの特別手当てよろしく」

 永遠の頭をなで続けながら、みのりはお願いしますと丁寧に頭を下げる。

「あー聞こえない……春、お前……そんなとこ……舐める、な……だめ、だって……」

 だんだん声が小さくなってきて、やがて寝息が聞こえてきた。

 みのりの頭のなかは疑問でいっぱいだった。

 春?
 わたしはそんな名前じゃないんですけど?

 春って???

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