アロマティック
 目の前に必要なものを並べ、説明しながら手を動かす。

「コップに永遠くんが選んだティーツリー1滴。それから、レモンの精油2滴。水を入れて、かき混ぜる……はい、できた!」

「はやっ」

 マジで簡単だと永遠は感心しながら、作りたての強力うがい薬の入ったコップを、みのりから受け取る。

「聖、これ」

「んー?」

 名前を呼ばれ、永遠から差し出されたコップを見て戸惑う。

「なにこれ、飲んでいいの?」

 コップに鼻を近づけて、なかの匂いを確かめている。

「ハーブ? 違う? なんか……すっきりしてる。レモン?」

「それでうがいしてきて」

「これで?」

「そう」

「………」

 匂いは爽やかでうまそうだけど。永遠の言葉にもどこか不安そうな聖。

「喉が楽になると思う」

 安心させるように、みのりも声をかける。

「試してみれば? 俺が貰ったアロマスプレー、効いたのか久しぶりにちゃんと眠れたんだよ」

 みのりたちのやり取りを、衝立の向こうから聞いていたらしい空の声。

「効いたんだ」

 永遠に笑顔が浮かぶ。リーダーの感想に嬉しそうだ。
 そこへスタッフがドアを叩いて顔を出した。

「すみません、本番前なんでスタジオまでお願いします」
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