百合の花
「…か、づ」
「眠い」
ほんのすこし、無表情を驚愕に染める。
そんな彼女から体を離して、何事もなかったかのようにこたつに突っ伏す。
「…、……」
俺の対応に、より羞恥心を増したらしい。
耳を押さえて、視線をさ迷わせる。
あまり表情には出さないが、なに!?なに!?と、瑠璃わーるどはただいま混乱に満ちてるだろう。
瑠璃の思考が俺に変わったことが愉快で仕方ない。
く、と一人で笑う。
伊織に勝ったなんて思ってる俺はガキ臭いかもしれない。
けど、それぐらい瑠璃のことを愛してる。絶対に口にしないけど。
ピーンポーンと、チャイムがなった。
「…来たか」
あたたかいこたつから抜け、玄関へ向かう。
踏みしめる床が冷たい。
がちゃりと鍵と扉を開けると、黒髪の女が顔を覗かせる。
大モデルさんのおでましだ。
「やっほ、歌月」
そんな彼女は控えめに笑った。