百合の花

ピンクは白に秘める

◆◇◆


渡された湯気の立つマグカップを握りしめる。


着なれない、歌月の大きめのパーカーをミニワンピに。
瑠璃ちゃんの長ズボンを七分丈に。


二人の愛が合わさった格好をしているわけなの。



「…」


寝室に、一人眠る美少女を眺めた。

あれから診察を終えた私は、瑠璃ちゃんたちのベッドの隣に布団を引かせてもらい、眠ることにした。


豆電球の明かりを眩しく弾く、彼女の白髪。

合わせたように透き通った睫毛に覆われた瞳は、今は閉じられている。

ダブルベッドに沈む猫耳フードの絶世の美少女は、芸能界にいる身の私でさえも見惚れてしまう。

こんな子、芸能界にもいないよ。


可愛いなあ、なんて。

やっぱり思ってしまう。



「…ねぇ、瑠璃ちゃん」



“シンデレラ”の名をもつ彼女の存在を知る人は一握り。


皆が揃って彼女を守るから。


隠すから、労るから――




「…いいじゃん。歌月までとらなくってもさあ」




貴女はみんなに愛されてるの。


だから、歌月にまでも愛されなくてもいいじゃない。



お願いだから、ねぇ。


私に歌月を返してよ。
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