百合の花
『ねぇ、弥生ちゃん』
『なに?尚隆のおじさん』
『君は、やはり守白を継ぐのだろう?』
『…そうだなあ。お姉ちゃんがこのままやる気なかったら、継ぐしかないよね』
『そうか。もし継ぐなら、英樹と歌月のどっちと結婚したい?』
『歌月!英樹なんて、歌月のお兄ちゃんとは思えないくらいキモいもん!』
『あ…ははは、そう来たかあ。一応どっちも息子なんだけど』
『でも事実』
『まあね。じゃあそうしようか』
『なにを?』
『君の将来のお婿さんは、歌月に決まりだ』
あの、ペテン師ジジイが。
なあにがお婿さんだ、ふざけんな。
「…」
なんとなく、歌月に会いたくなって。
寝室から廊下に出て、歌月のいるリビングへ向かう。
きっと、今ごろあのペテン師…こほん、おじさん。じゃない歌月のお父さん。
に、提出するあのノートを書いてるんだろう。
マグカップのジンとした熱さが手に伝わる。
中身は解毒剤…のようなもの。よくわかんないけど。
殺しの依頼の前に飲んで、力を強くして、それを解くための薬。
中身は一応漢方薬のマグカップだ。