百合の花



“シンデレラの下請け”なんて、そんなの。



二人の恋路を応援してるようなものじゃんか。




「歌月はっ、ちょっと残酷すぎるよっ…」




私が歌月のこと好きだって知ってるくせに。



百合だって、好きな人に愛されたいよ。



なのに、なのに。



「薔薇を守るため汚れろなんて……酷い、酷すぎるっ」



言ってから気づいた。



「…あ……」



私、最低だ。



戻れないことを言った気がする。




嫉妬心、劣等感。


そんなのが丸出しの女なんて、醜い以外何者でもない。




「歌、月…あの」



ごめんなさい、そう言いたかったのに。


――ポンポンと頭を撫でられた。




「ありがとう」



へたり、と。

何かが切れた気がした。


嫉妬とか、イライラとか、しがらみとか。

そう言う糸が、へたりと。


切れたというより、柔んだというべきか。



幼少期から、頭を撫でるという行為は歌月の癖らしい。


瑠璃ちゃんの頭も幾度と撫でてた。



「ごめんって言えないなら、ありがとうだろ」


……さっき私が拒絶したから。

だから、お礼を……
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