百合の花
さっき言ったこと、気にしてないのかな?と歌月をまじまじと見てみる。
困ったように笑ってる。
ただ、それだけだった。
一人騒いだ私が恥ずかしくなってくる。
「あ、そーそー」
涙をぬぐっていた私に微笑む彼。
濡れたような黒髪を美しいと思った。
まるで、瑠璃ちゃんと対みたい。
そんなことをぼんやりと思っていたら。
「――お仕事、お疲れさま」
そんなことをいうのだ。
『電話で言ってほしいの?』
ああ、そんなこと話したなあ。
労えとかいったら、この天然野郎は。
どうしよう、とんでもなく嬉しい――
「お…遅い!言うのが!」
照れ隠しに怒鳴ってみた。
彼にはきっと、全部バレてる。
私が喜んでるのも、ムカついてるのも。
いっそ、ただの道具としてほしいとまで願うの。
瑠璃ちゃんを守るための、汚すための道具として。
なのに。
変に優しくされたら。
中々恋に歯止めが利かなくなっちゃうじゃん。