百合の花
◇◇◇


夢見心地のまま、男は現状の理解に勤しんだ。



「えっと…」



オレンジかかった柔らかい灯りに包まれた、洋風な作りの室内。

男の尻を柔らかく包むは、綺麗にメイキングされたダブルベッド。




――ここは、ホテルの一室である。




「……」


ジャアジャアと風呂場から聞こえる音に、たらりと冷や汗が額を伝った。


無論、中に入っているのは、かの有名な桐生鈴花である。



――いつのまに、こんなことに。



コーヒーを飲んで談笑していたはずなのに、いつのまにかホテルの一室でこの状況になっていた。

本当にいつのまにか。


魔法にでもかけられたような、そんな雰囲気だった。

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