百合の花
「あ!よかったー!まだいて」
風呂場の扉から彼女が出てきた。
一流モデルが、、タオルを巻いただけのあられもない姿。
カツラをとった、流れる茶髪がやけに妖艶だ。
まとった湯気から、彼女の匂いが漂ってきた。
「あの、桐生さん…なんで私は」
「私が誘ったんですよ?」
にやりと。
顎に指先を持っていき、笑みを隠すような仕草をする。
「なっ…」
噂に聞く桐生鈴花のイメージではない。
いつも明るく、でもどこか大人びた少女。
そのはずなのに、今目の前にいるのは別人だ。
「あなたは、モデルでしょう…!」
こんな軽い軽いゴシップ。
許されるはずがないと、男は途端に退く。
流されてなるものかという意志が、男を支配していた。
流されたら最後。
それくらい彼女は上の存在なのだ。