百合の花
「――桐生さ、」
視界には、一面に影を纏った桐生鈴花が。
押し倒された。
そう男が気がつくのに、幾分か時間がかかった。
まさかアノ桐生鈴花が自分を押し倒すなんて、誰が想像するだろう。
反面、どこか興奮を覚えた。
こんな女が自分を欲している、なんて。
男の欲が、ぶわりと溢れた。
「ねぇ、社長さん」
補食前の猫みたいに笑う彼女に魅せられた。
ああ、瞳が青い。
なぜだろう、カラコンでも取ったのか。
さっきはサングラスをつけていたのに。
澄みきった空のような青い瞳だ。
それもまた猫のようで。
興奮に胸が震えた。
「――私ね、百合なんだって」