恋の味【更新中】






冬。

私は髪をバッサリと切った。

特に何か理由があるわけでもなかったが、友達や近所の人達に似合ってると言われて、なんだかふわふわするような心持ちだった。


私は春香に教えてもらった海に毎日のように通っていた。

冬の海はとても寒く、私は自分の手のひらに息を吹きかけて体の熱を保つ。

頬が裂けるように痛いが、目の前に広がる、この広い世界が好きだった。

ストンと腰を下ろして、遠くを見つめた。



ージャリッ


後ろで砂浜を踏む音が聞こえる。

思わず振り向くと、間近に男物のズボンが視界に入り、さらに視線を上に上げると、思わず、

「…ぁ」

と声が漏れた。
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