恋の味【更新中】
後ろに、夏樹がポケットに手を突っ込んで、少し口を尖らせて私を見下して立っていたのだ。
長い時間外にいたのか、夏樹の頬と鼻は、寒さで白雪よりも赤く染め、口から白い息を吐いていた。
何か嫌みったらしい言葉を浴びせられるのかと思った白雪は、自らつながった視線を解く。
しかし、夏樹の口からは一言も発せられなかった。
沈黙が続き、気まづく感じた私は、そっと下を向き、それから海に再び目をやった…が。
その瞬間、肩に強い衝撃を受けた。
「…何すんのよぉ」
地面に積もっていた雪を、右手で握り締め、白雪の右肩にぶつけたのだ。
白雪の言葉に対する返事はなく、代わりに、さっきとは違う子供らしい表情で声を出して、はははっと笑った。
そして、その後、くるりと私に背を向けて鋭い目つきでニヤッと笑って、雪の積もる砂浜の上を真っ直ぐに走り出した。