恋の味【更新中】

後ろに、夏樹がポケットに手を突っ込んで、少し口を尖らせて私を見下して立っていたのだ。


長い時間外にいたのか、夏樹の頬と鼻は、寒さで白雪よりも赤く染め、口から白い息を吐いていた。


何か嫌みったらしい言葉を浴びせられるのかと思った白雪は、自らつながった視線を解く。


しかし、夏樹の口からは一言も発せられなかった。

沈黙が続き、気まづく感じた私は、そっと下を向き、それから海に再び目をやった…が。

その瞬間、肩に強い衝撃を受けた。

「…何すんのよぉ」

地面に積もっていた雪を、右手で握り締め、白雪の右肩にぶつけたのだ。


白雪の言葉に対する返事はなく、代わりに、さっきとは違う子供らしい表情で声を出して、はははっと笑った。

そして、その後、くるりと私に背を向けて鋭い目つきでニヤッと笑って、雪の積もる砂浜の上を真っ直ぐに走り出した。
< 14 / 126 >

この作品をシェア

pagetop