恋の味【更新中】

やっと、気づけた。

やっと通じ合えたのに。



あぁ、神様、どうか許してください。

私はどうなってもいい。

どうか、夏樹だけは…。






「刹那よ、止まれ。お前はいかにも美しいから。」





何を口走っているのか。

これは、悪魔に身を捧げるときに発する言葉。


白雪はそれを知っていた。

昔、お母さんの読んでいた本で、チラッと目にした。

それからどうしてもその言葉に惹きつけられ、必死に意味を調べたことがあった。



白雪はその白く細い腕で、青く澄み渡る空を仰ぎ、ただただ願った。

太陽が一瞬、今までの何倍もの明るさに光ったように見えた。


嫌いだ。

夏樹がいなくなる世界なんて、意味がない。

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