恋の味【更新中】
小学時代
1
「…春の匂いがする」
暖かな風が私の頬を撫でる。
ー…今日からここが私の学校かぁ
そう思うと、気持ちが重くなった。
校門の目の前にただただ立ち尽くしている私をチラチラ見ながら、ランドセルを背負った子供達が通り過ぎていく。
ザァ…と、木々が揺れ、桜の花びらが舞う。
それと同時に、浅く被っていたために、学校指定の黄色い帽子が風に乗って飛ばされた。
私は、飛ばされていく帽子を見ながら、きれいだなぁ、なんて考えていた。
「はい。なんで帽子、拾わないんだよ」
はっとした。
声が聞こえた前方へ視線を向ける。
目の前には黄色い帽子が突き出されていた。
「ありがとう」
とだけ言って落としてしまったそれを受け取る。