白雪さんと7人の兄弟
「…そろそろ行きましょうか。」
「…はい、小鳥さん。」
私はくるり、と天星園に背を向けて正門へと歩き出す。
お気に入りのワインレッドの靴を履いているというのに何だか気持ちは落ち着かない。
タクシーに乗り込むと、私の心臓を何故か早まった。
何を怖がっているのか、何が心配なのか。
それの持ち主だというのに、分からなかった。
「…いいかしら。妃奈。」
「…はい。」
私のその声と同時に、タクシーはエンジン音を鳴らす。
その時だった。
「妃奈ーーーーー!!!」
タクシーの後ろから、大きな声がする。
ーーーあの子達だった。
「お姉ちゃーーーん!」
「元気でねーーー!」
遠ざかるその姿。
そして、あの黒髪を揺らして、リセも現れた。
「…何かあったら帰ってこいよ!
ここはお前の、家なんだから!」
「…ありがとう、リセっ…」
私の声は、届いていただろうか。
「…いい友達を持ったのね。」
小鳥さんがハンカチを差し出しながら、そう言った。
「…友達じゃ、ないです。
…家族なんです。」
私は小さく、そう呟いた。