白雪さんと7人の兄弟
もう一度最後に確認、と手鏡見て前髪を整えていると、小鳥さんが「あ!」と声を発した。

「竜次!こっちよー!」

「ごめんごめん、遅くなった。」

低い男性の声。私の兄になる人物で、次男の竜次さん。

ついに来てしまった。

手早く手鏡をしまいこみ、無理やり気を落ち着かせる。
くるりと振り向くとそこに居たのは、黒髪に泣きぼくろのある男性。

「で、そっちが?」

「ええ。妹になる妃奈よ。…妃奈、こっちは竜次。次男の竜次よ。」

「ははは、は、はじめまして!ひ、妃奈です!よ、よよ…よろしく、お願いしますっ!」

吃りながらもそう言うと、竜次さんはにっこりと笑った。

「元気な子だ。うん、いいよいいよ。俺は白雪竜次。次男だ。基本的に長男のサク兄と母さんはいないから、家の中では俺が一番年上。何かあったら相談してくれ。」

そう言って竜次さんは手を差し出してくる。私もそっと、手を伸ばすと、優しく握手をしてくれた。

そして、そのまま手を引かれる。

「え、ええ!?あ、あの…。」

「妹なんだから、当たり前だろ?車、止めてあるから。ほら母さんも!」

「はいはい。竜次はせっかちねえ。」

小鳥さんはため息をつきながらそう歩くが、私と竜次さんの手については何も触れなかった。これが兄弟で、家族で。
多分竜次さんにとっては当たり前なんだろう。でも、今まで本当の家族というものの中にいなかった私にとっては、ドキドキさせることでしかなかった。
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